以前から、アレルギー児本人がアレルゲンとなる食品を食べなくても、家族が原因食品を食べているとアレルギーが悪化することを多くの症例で経験しました。例えば、卵アレルギーの赤ちゃんの食事や母乳を授乳中の母親の食事から卵を除去しても、アレルギーは改善せず、家族も含めてアレルギー児周囲の環境から卵を取り除くと、即座にアレルギーは改善してしまいます。おそらくは、皮膚に食物が接触することでアレルギーの感作（アレルギーを起こす準備状態になること）を起こし、接触することで湿疹が悪化するのだろうと考えていました。したがって、外来での指導は、アレルギー本人だけではなく、家族の食事内容も食物日誌で確認し環境中からの除去を指導してきました。この指導方法が正しいことを支持する内容の研究結果がイギリスから報告されました。
Lack G.らは(1)、13971人の入学前の子供たちを調査して、49名のピーナッツアレルギー児を見出しました。これらの症例において、ピーナッツアレルギーを起こす原因となる因子を研究しました。その結果、ピーナッツアレルギーの家族歴、関節と皮膚の皺での発疹、浸出液を伴った発疹、毛細血管出血と痂皮を伴う発疹と相関関係がありました。また、乳児期の大豆乳の使用がピーナッツアレルギーを悪化させ、アレルギーを起こさせる最大の要因はピーナッツオイルを含んだ皮膚保護用製剤の使用であることを結論しました。著者らは、食べることでアレルギーを起こすのではなく、微量のピーナッツ抗原が残存するピーナッツオイルを含む製剤を皮膚に塗ってピーナッツ抗原と接触することで食物アレルギーが激しくなっていく可能性を指摘しています。
同様のことは、他の食品でも考えることができます。典型的な卵アレルギーで起こる赤ちゃんの湿疹は、卵を調理し食べたときに汚染された母親や家族の衣服と接触する頬やあご、衣服で覆われていない手足や、食べた人の口から唾液のしぶきにのって飛び散った卵の残渣が付着する頭やおでこから始まります。
動物実験では、吸入した場合とは違ったメカニズムで、皮膚に食物抗原（卵白）を塗ることで食物アレルギーを起こすことができることが分かっています(2)。皮膚に食物抗原を塗るとIgEが増加し、皮膚でのアレルギー反応が活発になります。この状態に、食物抗原を吸入すると気道でのアレルギー反応も悪化することが報告されています（3）。
吸入性の食物アレルギー
接触性の食物アレルギー
文献
1. Lack G., Fox D., Northstone K., Golding J.: Factors Associated with the Development of Peanut Allergy in Childhood. N Engl J Med 348:977-985, 2003
2. Herrick CA, MacLeod H, Glusac E, Tigelaar RE, Bottomly K.:Th2 responses induced by epicutaneous or inhalational protein exposure are differentially dependent on IL-4. J Clin Invest 105(6):765-75, 2000
3. Saloga J, Renz H, Larsen GL, and Gelfand EW: Increased Airway Responsiveness in Mice Depends on Local Challenge with Antigen. Am J Respir Care Med 149:65-70, 1994
